マルメロの陽光_ビクトル・エリセ

スペインの映画監督と言えば、
間違いなく、
この人の名前が出てくるでしょう。

その名は、
ビクトル・エリセ

短編映画を除いて、
長編映画だけだと
わずか3作品しか撮っていないのに
世界的に有名な監督ですね。

 

この”マルメロの陽光”は、
その長編映画3作目の作品です。

しかも、
前の2作品は劇映画ですが
この映画は
ドキュメンタリー映画なんです。

撮影した相手は、
現代スペイン・リアリズムの巨匠
アントニオ・ロペス・ガルシア!

 

私も絵を描きますが、

たしか、
2000年過ぎたころから、
諏訪敦磯江毅など
次々とスペイン帰りの写実派が
出てきましたね。

当時、私は、
あまりにもスペイン写実派が多いので

玉武士

そんなにスペインは、
リアリズムなのか?

と驚き、何を教わっているのか

気になっていました。

それほど、スペインは、
リアリズムで、
アントニオ・ロペス・ガルシア
その巨匠なんです。

その彼が、
この映画では
陽光が黄金色に染める
マルメロの実
描こうとしています。

 

糸を張って、水平をとり
マルメロの実や葉っぱに
印をつけたり
自分の立ち位置に
マーキングしたりと、
かなり徹底しています。

そして、いざ制作に入ります。

映画は、その記録を撮り続けます。

何日も何日も。。。

そして、
クライマックスから結末まで
ある意味で、映画を見ている観客を
裏切ることになるかもしれません。

 

これね~、
ドキュメンタリー映画という
わくまたは観念かんねんで見ていると

何だこりゃ~

と思うかもしれません。

 

私は、この映画を見て思いました。

 

この映画は、
よくある普通の
ドキュメンタリー映画では
マルメロの陽光_ビクトル・エリセないんです。

アート作品なんです。

たとえば、
ビデオアートやメディアアート
またはフィルムを使った
コンセプチュアリアートなんです。

また、この映画の
テーマが映画的ではありません。

そのテーマは”時”
つまり”時間”
それと”死”です。

限られた時間、
つまり
人生として生きている時間の意味を
フィルムという
これも、限られた時間内におさめて
見事に表しています。

 

だから、
マルメロの陽光を描き完成するの
本題ではなく
アントニオ・ロペス・ガルシア
生活そのものが、
黄金色に染める
”マルメロの陽光”
そのものなのです。

私も彼みたいな生き方が理想ですね~。

毎日、毎日、幸福に満ちています。

イマジネーションで脳は活性化し、
友達も来てくれて、子供や妻にも恵まれ
彼を必要としてくれる人々もいます。

そして、大事なのは
”時”は常に彼の時間なのです。

誰にも左右されず
自分の思うままに時間が過ぎるのです。

私も絵を描きますが、
絵描きにとって一番幸せな時間は
絵を描いている時間です。

これで、
言うと当たり前ですが

つまり、
創作している時間なんです。

そして、
一番辛いのが
絵を完成したときです。

まあ、、
作品を見て満足するかもしれません。

でも、大体は満足しません。

まだ、まだ、描き足らない。

あのレオナルド・ダ・ヴィンチが
いい例です。

ほとんどが未完成。

モナリザなんか
死ぬまで描いていました。

だから、完成というのは
長い旅の終焉みたいなものです。

皆さんも
旅をしているときは楽しいですよね。
でも、それが終わると
どこか寂しい。。。。
それと同じなんです。

一方
ラジオからながれる
湾岸戦争などの緊迫きんぱくした放送マルメロの陽光_ビクトル・エリセ

同じ人間なのに
明らかに違った
生き方を伝えています。

そして親友であり、
同じアーティストの
エンリケ・グランと語り合って見ていた。

ミケランジェロ「最後の審判」

その内容は
地上では戦乱や飢餓、
疫病などのうずが降りかかり

また、一方では
永遠の命と、神と共に過ごす生活、
そして神の国の永住権
3つの恩恵を受けている。

この対比
主人公の生活戦争で苦しむ生活
の例えに見えます。

私たちの生活もそうです。

金を稼ぐために、
常に他人と競争しながら
あくせく働き、
疲弊ひへいして家で出来合いものを
1人でテレビを見ながら食べる。

この映画でも
夜のマドリードが映され
そのビルの窓から
部屋を暗くして
テレビを見ながら
1人で過ごしている人々が
映っています。

でも、
主人公の夫婦は
制作に没頭しています。
夜でも
至福の時間が続いているのです。

アントニオ・ロペス・ガルシア
モデルとなり、いつの間にか
深い眠りに入ってしまう。

このシーンもいいですねー。

人生に満足しているがゆえに
子供のように、すぐ寝入ってしまう。

不眠症で悩む現代人とは違います。

私も、このように
何の恐怖、不安、後悔
そして、苦しみもなく
ただ、ただ
寝入るように死にたいものです。

カメラは
アントニオ・ロペス・ガルシア
撮っていたのに
マルメロを撮っていますね。

朽ち果てていくマルメロの実

そう、
私たち人間も朽ち果てていく。。。

限られた人生

やがて訪れる死

我々人間本来ほんらいとして
どう生きていくのか

資本主義にどっぷりかっている
我々現代人に
資本主義以外の生き方を
ある意味、
提示しているのかもしれません。

マルメロの陽光_ビクトル・エリセん~、考えされられる
素晴らしい映画でした。

最後まで読んで頂いてありがとうございます。
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あらすじ

秋のマドリッド。
“マルメロの陽光”と呼ばれる
夏の太陽が再び戻って来る日として
知られている九月二十八日の翌朝。

アントニオ・ロペスが
新しい画材を抱えてアトリエに来る。

アトリエを掃除し、
準備を整えたアントニオは、
陽光が黄金色に染めるマルメロの実を
描くという長年の夢に今年も挑み始めた。

映画board》より

 

1992年 スペイン
監督 ビクトル・エリセ
原作 ビクトル・エリセ
アントニオ・ロペス・ガルシア
出演 アントニオ・ロペス・ガルシア
マリア・モレノ
エンリケ・グラン
DVD&Bluray-Disc
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