アポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)

この映画のタイトル
“アポロン”って何でしょう?

それは
ギリシア神話に登場する
男の神ですね。
全能の神ゼウスの息子で、
病を払う治療神でもあります。
また、
神託しんたくさずける予言の神でもあります。

その“アポロン”から
受ける神託しんたく地獄である
というのが、
この映画のタイトルです。

でも
これはあくまでも邦題で
大本のタイトルではありません。
原題は「EdipoRe」イタリア語です。
訳すと「オイデップス王」です。

そう、
ギリシア悲劇最高傑作
「オイデップス王」のことですね。
この悲劇を後に
オーストリアの精神科医
ジークムント・フロイド
“エディプス・コンプレックス”として
提示しました。

“エディプス・コンプレックス”とは
母親を手に入れようと思い
父親に対して強い対抗心を抱くという
幼児期において起こる心理の抑圧のことです。

この映画の監督である
パゾリーニ
“エディプス・コンプレックス”
映画に取り入れたそうです。

私は自分自身の
エディプス・コンプレックス
語ったのである。
プロローグの少年、それは私だ。
彼の父、それは私の父だ。
そして、母親は私自身の母親なのである。
ピエル・パオロ・パゾリーニ

以前見ました
「奇跡の丘」でもそうでしたが、

 

パゾリーニ監督は、
1つの作品に
いくつもの意味合いを
もたせますね~

でも
この映画は
「奇跡の丘」と比べると
解りやすい構成になっていますね

冒頭からして、
そう!
古代ギリシアの都市国家ポリス
テーバイの石碑が映されたと思ったら、
いきなりムッソリーニ
ファシスト体制の時代へ
1922年頃だと思う)
イタリア王国の国旗が、
その時代を現わしていますね。

パゾリーニの父は軍人で、
ムッソリーニの命を救ったことで
有名なファシストです。

その軍服を着た父が
幼い息子(たぶん2才ぐらい)
パゾリーニにらんでいます。
そして、
幼い子供は絶望して泣き出します。

この、にらむ父親といい
絶望する子供といい
実に素晴らしい
とくに子供の動き
(演じているのか、偶然撮れたのかわからない)
最高
子供の悲痛
見ている私の心に刺さるほど
アポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)見事です。

その夜、
軍人である父は、
息子の足首を強くにぎります。

そして場面が変わって
古代ギリシアの時代

子供は両手、両足を
木にしばられて、
男に運ばれています。

ここから、
オイデップス王の物語になります。

物語は忠実に描かれて
とうとうオイデップス王
自分の目をつぶして
放浪の旅に出ます。

そして場面は
1960年代
イタリア・ボローニャへ、、

パゾリーニの故郷が
ボローニャということなので
このシーンは
そういわれています。

さて
ここからが
この 映画最大の難問です。

 

オイデップス王の物語は、
放浪の旅へ出たことで
終わっています。

そして
パゾリーニ自身が語った
エディプス・コンプレックス
同様に終わっている。

なのに、物語は
1960年代観光地工場地帯
生まれた場所野原
何を意味しているのかが
さっぱり解らない!

もはや見えぬ光よ、
 かつて、私のものだった光よ。
 もう一度、私を照らしてくれ。
 やっとたどり着いた。
 人生は始まった所で終わるのだ。

このラストの言葉!
意味が解らん
人生は始まった所
言っているが
生まれた場所は、
とっくに通り越している。

いきついた所は
木がならんで
小川が流れている野原だ。

 

アポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)くそ~アポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)
また、やってくれたな!
「奇跡の丘」といい、
この人は
一筋縄ではいかない監督だアポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)

 

さあ
ここから
この映画の
謎解きの旅が始まります。

そして
「オイデップス王」には
“エディプス・コンプレックス”以外に
重要なテーマがあることを知り
そこから
知られざる
パゾリーニの内面が見えてきました。

いや~、
まいったアポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)

これは傑作だアポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)アポロンの地獄&パゾリーニの物語(前編)

この話の続きは次回

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あらすじ

一人の女が、男の児を生んだ。
あどけないその赤ん坊の顔をみて、
父親は暗い予感にとらわれた。
「この子は、
 私の愛する女の愛を奪うだろう。
 そして、私を殺し、
 私の持てるすべてを奪うであろう」。

舞台は古代ギリシャにとぶ。
太陽に焼けただれた赤土の山中に、
一人の男が赤ん坊を捨てにきた。
泣きさけぶ赤ん坊を
さすがに殺すことはできず、
男はそのまま立ち去った。

捨て子は、
コリントスの王ポリュボスにひろわれ、
神に授かった子として
王妃メローペの手で大事に育てられ、
たくましい若者エディポとなった。
ある日、

映画.com》より

Data

1967年 イタリア
監督・脚本
撮影
ピエル・パオロ・パゾリーニ
原作 ソポクレス
撮影 ジュゼッペ・ルッツォリーニ
出演 シルヴァーナ・マンガーノ
フランコ・チッティ
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