実に不思議な絵です。
真ん中の男性は剣を3本持っています。
左側には3人の男性が
その剣に手を差し出しています。
そして
右側の3人の女性は
寝ているのでしょうか?
この絵のタイトルは
『ホラティウス兄弟の誓い』です。
実はこの作品
愛国心ゆえの義務感と
家族愛のあいだの葛藤
が、主題なのです。
どういう事でしょうか?
まずは、
ホラティウス兄弟について
読み解いてみましょう。
ホラティウス兄弟は、
古代ローマの
伝説的な物語であり、
ローマ建国時代の
英雄的な出来事として
知られています。
その物語は、
ホラティウス兄弟という
3つ子の兄弟が、
代表として
相手方の3つ子の
クリアティウス兄弟と
3対3の戦いを行うことで、
両陣営の争いを
解決しようとした
という内容で知られています。
物語の舞台は、
紀元前669年に
古代ローマと
アルバ・ロンガの間で
行われた戦争です。
両陣営は
全面戦争を避けるために、
3対3の戦いを提案しました。
ホラティウス兄弟は
ローマの代表として選ばれ、
クリアティウス兄弟は
アルバ・ロンガの代表として
選ばれました。
戦いは、
3人とも負傷した
クリアティウス兄弟が
ホラティウス兄弟の
2人を殺害。
しかし、
最終的に
無傷で生き残った
ホラティウスが
クリアティウス兄弟を
全員!
討ち取ったのです。
彼の勝利はローマに
大きな勇気と誇りを
もたらしました。
しかし、
ホラティウス兄弟が凱旋した際に、
彼らの妹が
クリアティウス兄弟の1人と
関係を持っていたことが発覚し、
ホラティウスは怒りのあまりに
妹を殺してしまったのです。
この行動に対して、
ホラティウスは
裁判にかけられましたが、
市民の支持を受けて釈放されました。
ホラティウス兄弟の物語は、
勇気、忠誠心、家族の絆、
そして国家の利益といった
テーマを含んでいます。
彼らの物語は、
ローマの建国時代の
神話として伝えられ、
ローマ共和国の
価値観や理念を
象徴するものとされています。
さて、
作品にもどって見てみましょう
この絵は、タイトル通り
ホラティウス3兄弟が、
クリアティウス兄弟との戦いに
打ち勝つことを 父親に誓うシーンです。
ホラティウス3兄弟は
手のひらを下に向け
腕を前方に伸ばしたポースとなっています。
これは”ローマ式敬礼”と言われいます。
でも、このポーズは
古代ローマの文献や美術にはありません。
そう、 ダヴィッドが作ったポーズなのです。
このポーズは新古典主義の芸術作品で使われ、
さらに近代において
演劇や映画で古代ローマの敬礼として
描かれ 大衆にまで広がりました、
そして現代では、
このポーズを ”ナチス式敬礼”とも言われています。
この作品も、
ニコラ・プッサンが確立した手法
限定された数の人物を水平線と垂直線を
強調した構図に配することによって
倫理的な意味をもつ古代史の事件を
明瞭に物語るという物語画(歴史画)
を応用しましたね。
さらに
古代彫刻を思わせる
大理石の
浅浮き彫り(ローレリーフ)で
人物が何層にも重なる
表現にしました。
これぞ、まさに
新古典主義絵画ですね。
ちなみに
父親の
背後にいる女性たちは、
3兄弟の母親と姉妹たちです。
彼女たちの見方は
一般的には、
泣いているとか悲しんでいる
と言うことになっていますが、
よ~く見てください。
そうには見えません。
個人的意見で言うと
これは、
その後の悲劇が解るので、
その現実を受け入れたくない
見たくないと絶望している
ふうに見えます。
小さな子供だけが
直視しています。
まるで
その全てを見てしまった
のかも?しれません。。