天竺国(インド)の
北部ヒマラヤ山の麓にある
カピラヴァストゥを治める
”シャーキャ(釈迦)族”がいました。
国王のシュッドーダナ(浄飯王)と、
その妃(きさき)マーヤー(摩耶夫人)は
徳高く、人望がありました。
しかし、結婚して十数年たっても
子宝に恵まれませんでした。
ある夜、
マーヤー(摩耶夫人)は美しい夢を見ました。
翌朝、
シュッドーダナ(浄飯王)が
高名な婆羅門(バラモン)に占わせたところ
と告げられました。
4月8日、
マーヤー(摩耶夫人)は
故郷で出産するため
隣国のコーリヤ国へ
里帰りの旅に出ました。
その途中で、
あざやかな真紅のアソーカ
(無憂樹)の花咲く
ルンビニー園に
立ち寄ったときのことです。
マーヤー(摩耶夫人)が
花を取ろうと手を伸ばすと、
何の苦痛も感じないで
右脇から静かに
男の子が産み落とされました。
男の子は、
堂々と7歩踏み出し右手を上に、
左手を下に向けて
と宣言しました。
「この世界で我にまさるほとけなし」
という意味です。
男の子の誕生に大喜びをした
シュッドーダナ(浄飯王)は
男の子の名を「シッダールタ」と名付けました。
「目的を達する人」という意味です。
ある日、
山中に住む高名な
アシタ仙人が突然訪れました。
そしてシッダールタ(釈迦)を抱きかかえて、
こう言いました。
アシタ仙人は、
暗い顔になり、涙を流しました。
それを見て驚いた
シュッドーダナ(浄飯王)は
とたずねました。
アシタ仙人は、もう一度涙すると、
深く礼拝をして宮殿を去っていきました。
シッダールタ(釈迦)が誕生して7日後、
マーヤー(摩耶夫人)は
産褥熱(さんじょくねつ)で
亡くなりました。
シュッドーダナ(浄飯王)は、
マーヤー(摩耶夫人)の妹、
マハーパジャーパティー(摩訶波闍波提)を
妃として迎え入れました。
マハーパジャーパティー(摩訶波闍波提)は、
母に劣らぬ愛情で
シッダールタ(釈迦)を育み続けたが、
やはり、母の死は
大きな心の影となっていました。
シッダールタ(釈迦)が、12歳になった春。
シュッドーダナ(浄飯王)に従って
五穀豊穣を祈る祭りに
参列したときのことでした。
シュッドーダナ(浄飯王)が鍬を
2,3度大地に打ち込んだあと、
掘り起こした土のなかから、
小さな虫が現れました。
すると、
一羽の小鳥が飛んできて、
その虫をくわえて飛び去ったのです。
さらに、
もう一羽の猛禽類(もうきんるい)が
その小鳥を鋭い爪で捕らえ飛び去っていきました。
一瞬の出来事です。
参列者一同は、
思わず驚きの声を上げたが、
シッダールタ(釈迦)は一言
とつぶやきました。
こう判断したシッダールタ(釈迦)は、
いたたまれなく席を離れ、
閻浮樹という
聖なる木の下に座し瞑想を始めました。
瞑想中、太陽は東から西へ移動していくのに、
樹の影の位置は少しも変わらなかったそうです。