天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

天竺てんじく国(インド)の
北部ヒマラヤ山のふもとにある
カピラヴァストゥを治める
”シャーキャ(釈迦)族”がいました。

国王のシュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)と、
その妃(きさき)マーヤー(摩耶夫人まやぶにん)は
徳高く、人望がありました。

しかし、結婚して十数年たっても
子宝に恵まれませんでした。

 入胎

ある夜、
マーヤー(摩耶夫人まやぶにん)は美しい夢を見ました。

天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

遙か遠い天から、
6本の金色の牙を持つ
純白の気高い象が降りてきて、
私の右脇からおなかの中に
入っていったのです。
天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

翌朝、
シュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)が
高名な婆羅門(バラモン)に占わせたところ

天の定めを抱いた世にもまれ
王子を身籠みごもった

と告げられました。

 誕生

4月8日
マーヤー(摩耶夫人まやぶにん)は
故郷で出産するため
隣国のコーリヤ国へ
里帰りの旅に出ました。

その途中で、
あざやかな真紅しんくのアソーカ
無憂樹むうじゅ)の花咲く
ルンビニー園に
立ち寄ったときのことです。

マーヤー(摩耶夫人まやぶにん)が
花を取ろうと手を伸ばすと、
何の苦痛も感じないで
右脇から静かに
男の子が産み落とされました。

天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

男の子は、
堂々と7歩踏み出し右手を上に、
左手を下に向けて

天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

アッゴー、アハム、アスミ、ローカッサ・・・
天上天下唯我独尊てんじょうてんげゆいがどくそん

と宣言しました。
「この世界で我にまさるほとけ・・・なし」
という意味です。

 

 予言

男の子の誕生に大喜びをした
シュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)は
男の子の名を「シッダールタ」と名付けました。
「目的を達する人」という意味です。

ある日、
山中に住む高名な
アシタ仙人が突然訪れました。

天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

そしてシッダールタ(釈迦)を抱きかかえて、
こう言いました。

アシタ仙人
この子には2つの道があります。

アシタ仙人
1つは偉大な帝王になること

アシタ仙人
そしてもう1つは
全人類が救われる
『仏陀(ブッダ)』になることです。

アシタ仙人は、
暗い顔になり、涙を流しました。

それを見て驚いた
シュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)は

浄飯王
この子の将来に何か災いがあるのですか?

とたずねました。

アシタ仙人
いや、違います。王子様は、
3000年に一度と稀(まれ)に見る偉大な宝です。

アシタ仙人
最高の方がこの世にお生まれになったというのに、
私の余命はいくばくもありません。

アシタ仙人
最高の方が悟りを開かれるまえに、
私は死んでしまうのです。
悩み、悲嘆し、苦しみながら・・・

アシタ仙人は、もう一度涙すると、
深く礼拝をして宮殿を去っていきました。

 死と地獄

シッダールタ(釈迦)が誕生して7日後、
マーヤー(摩耶夫人まやぶにん)は
産褥熱(さんじょくねつ)で
亡くなりました。

シュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)は、
マーヤー(摩耶夫人まやぶにん)の妹、
マハーパジャーパティー(摩訶波闍波提まかはじゃはだい)を
きさきとして迎え入れました。

マハーパジャーパティー(摩訶波闍波提まかはじゃはだい)は、
母に劣らぬ愛情で
シッダールタ(釈迦)を育み続けたが、
やはり、母の死は
大きな心の影となっていました。

シッダールタ
母上は私を産んだばかりに、
命を縮めてしまった。
なんということだ。
私がこの世に生まれたのには
どんな意味があるのだろう


シッダールタ(釈迦)が、12歳になった春。
シュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)に従って
五穀豊穣ごこくほうじょうを祈る祭りに
参列したときのことでした。

シュッドーダナ(浄飯王じょうぼんのう)がくわ
2,3度大地に打ち込んだあと、
掘り起こした土のなかから、
小さな虫が現れました。

すると、
一羽の小鳥が飛んできて、
その虫をくわえて飛び去ったのです。

天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

さらに、
もう一羽の猛禽類(もうきんるい)が
その小鳥を鋭い爪で捕らえ飛び去っていきました。

天上天下唯我独尊_釈迦誕生そして死と地獄

一瞬の出来事です。

参列者一同は、
思わず驚きの声を上げたが、
シッダールタ(釈迦)は一言

シッダールタ
地獄

とつぶやきました。

シッダールタ
この世の中を
ありのままに直視すれば、
われわれの世界は
1つの地獄にほかならない

こう判断したシッダールタ(釈迦)は、
いたたまれなく席を離れ、
閻浮樹えんぷじゅという
聖なる木の下に座し瞑想を始めました。

瞑想中、太陽は東から西へ移動していくのに、
樹の影の位置は少しも変わらなかったそうです。

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