この絵は、
タイトルの通り
通りがかりの女性が
ベリサリウスに
施しを与えています。
そして、
女性の背後で
兵士が驚いているのです。
何故、
兵士が驚いているのでしょうか?
そもそも
ベリサリウスとは
どんな人物なのでしょう。
ベリサリウスは、
東ローマ帝国の将軍であり、
6世紀の
ビザンツ帝国で
最も偉大な
指導者の一人
とされています。
ベリサリウスは
紀元前505年頃に生まれ、
エウフォラスという
貧しい農家の家に生まれました。
彼は教育を受けることができず、
若くして軍隊に入隊しました。
彼の軍事的才能がすぐに発揮され、
皇帝ユスティニアヌス1世に
よって発掘されました。
彼は
ペルシャ、アフリカ、イタリアで
多くの戦いに参加し、
その中でも彼の最も有名な勝利は、
紀元前535年から
紀元前555年にかけての
東ゴート戦争での勝利です。
彼はまた、
ユスティニアヌス1世の命令で、
コンスタンティノープルの
再建に貢献しました。
しかし、
皇位を巡る陰謀に加担したとして
反逆罪で採捕され
その時、視力を失います。
そして
結局、無実と判明し釈放されました。
視力を失った
ベリサリウスは、
その後、憤死したとか
乞食になってしまったとか
言われ不遇な晩年を過ごしたそうです。
それでも、
彼は後世において
その勇気、献身、
そして戦略的才能によって
称えられています。
この絵は、
まさに、
無実の罪で投獄され
視力を失い
(両目がえぐり取られたとう説もある)
そして、釈放されて
乞食になった
ベリサリウスの悲劇を描いています。
でも、
それだけではありません。
戦争で活躍し
皇帝よりも民衆に人気があった
指導者ベリサリウス
その彼がどん底に落ちても
民衆の支持が落ちていないことを
必死に彼を助けようとする子供と
その彼に施しを与える婦人の
慈悲深い目が物語っています。
そして
ベリサリウスの姿を見て
驚愕する兵士は
あれだけ
皇帝ユスティニアヌス1世に
対して
深い忠誠心を示し
数々の功績を残した
将軍が、
その皇帝に
功績を報いられるどころか
逆に、
両目をえぐられ、乞食にした
その皇帝の器の小ささに
驚愕したと思われます。
それは
皇帝に仕える無意味さを
示しているからなのです。
ダヴィッドは、
1775年~1780年にかけて
イタリアにいました。
そこで目にしたのは
古典芸術の圧倒感
とくに古代彫刻の豊かさに
すっかり打ちのめされ
今まで描いていたロココ絵画に
絶望したのです。
イタリアから帰国後に
描いた絵がこの作品。
イタリアから学んだ古典芸術と
プッサンの古典主義手法が
合わさって
まさに
新古典主義が誕生した作品
なのかもしれません。
またダヴィッドは
イタリア滞在時に
ローマ周辺の風景や建造物を
スケッチしていました。
この
3本の堂々たる円柱は、
古代ローマ建築のなかで
最も質素で威厳のある
ドーリス式の円柱です。
古代建築にたいする
こだわりが伝わってきますね。