「イーゼンハィム祭壇画」の、
第1面
その右側に
今回の絵があります。
「隠者 聖アントニウス」です。
聖アントニウスの絵は
第3面にもあります。
聖アントニウスの
祭日のみ公開されました。
彫刻も絵画も
すべて聖アントニウスです。
この「イーゼンハィム祭壇画」は、
「聖アントニウス会修道院 付属施療院 礼拝堂」
にありました。
つまり、
聖アントニウスは
病院修道会の守護聖人なのです。
でも
聖アントニウスは、
聖書には出ていません。
彼について書かれているのは、
キリスト教の聖人伝集である
「黄金伝説」
に少し載っているのと
司教アタナシオスが書いた
「聖アントニウス伝」だけらしいのです。
それによると
エジプトの
高貴な身分のもとで
生まれ
両親はキリスト教徒で、
彼もキリスト教徒として
養育されていました。
両親が亡くなると
貧者に財産を与えて
砂漠に移り住み、
隠修士として
瞑想と苦行の生活を送ります。第一の苦行では、
悪魔が現れて、
財産、家族の絆、金銭欲、
名誉欲、食欲、
人生の楽しみごとといった
彼が断ち切っていた
現世のもろもろの
欲ことを誘惑し
美徳のきたなさ、
美徳が要求する辛い労働を
問題にしながら、
苦行をすぐに止めるように
と言ってきました。
さらに
悪魔は女性に
姿を変えて誘惑します。
それでも
アントニウスは
なんとか耐えました。第二の苦行では、
悪魔の一群がやってきて
彼をめった打ちにしました。
しかし、
アントニウスは
こう叫びました。
「われアントニウスはここにいる、
傷などから逃げられるか。
きさまがもっとたくさん
傷を負わしたところで、
わたしをキリストの愛から
離すことなどできない」
悪魔は
さらにおおぜいの仲間と
ともにやってきて
猛獣に姿を変えて
アントニウスめがけて
いっせいに襲いかかりました。
アントニウスは全身傷だらけになり、
地面にたおれこんだ。
そのとき、
空から明るい
一条の光が射し込んできて、
悪魔たちを残らず追い散らしました。
その光は主が授けた救いの手でした。
アントニウスは主に向かって
「主よどこにおられたのですか?
なぜ最初のときは
ここに来てくださらなかったのでしょうか?
それになぜわたしの傷も治して
くだされなかったのでしょうか?」
と言うと、
主は
「アントニウスよ、私はあなたのそばにいた。
しかし、あなたの戦いぶりを
みたかったからそのままにしていたのだ。
あなたはじつに勇敢に戦った。
私はこれからいつでもあなたに救いの手をのべよう。
そしてあなたの名声を広く伝えよう」
と言いました。第三の苦行では、
彼はピスピルの山に向かい、
無人の荒れた砦を発見して、
そこを第三の修行の地にした。
そして砦の扉を閉めきったままで、
一度も外にでず
およそ二十年間にわたって
厳しい修行を続けました。
彼の修行は、
やがて人々の間で話題になり、
ピスピルの砦の近くには
アントニウスにあやかろうという
人々でいっぱいになりました。二十年間にわたって
修行をしたアントニウスは
砦から出て、
集まった人々に説教をしました。
こうして山には修道院が建ち並び、
砂漠は修道僧の群で
いっぱいになりました。
こうして、
アントニウスは
「修道院の創設者」
または
「修道士の父」
と呼ばれるようになりました。60歳をこえたアントニウスは
第四の苦行地として
コルズム山を選び
再び、
孤独への道を選びます、
ここで、アントニウスは
病気の治療という奇跡をおこしました。
そして、105歳まで生きたそうです。
「隠者 聖アントニウス」
「隠者 聖アントニウス」では、
聖アントニウスの後ろの窓に
ペストの悪魔が
ガラスを粉々にして入ろうとしています。
それでも
聖アントニウスは堂々としているのです。
隠修士聖パウルスを訪れる聖アントニウス
聖アントニウスが90歳のときに、
(第四の苦行の時)
もう1人の隠修士、
113歳であった聖パウルスに訪れた絵です。
この絵で、
聖アントニウスのモデルが解ります。
聖アントニウスが座っている岩に
盾形紋章があります。
これは
「イーゼンハィム祭壇画」がある
「聖アントニウス会修道院 付属施療院 礼拝堂」
の指導者グイド・グエルシでした。
彼の肖像画があります。
たしかに、
なんとなく似てますね。
そして、
聖パウルスのモデルは
グリューネヴァルト自身です。
聖アントニウスの誘惑
第二の苦行を
描いています。
悪魔が猛獣に
姿を変えて
アントニウスに
襲いかかっている絵ですね。
右下の紙切れには、
善良なるイエスよ。
あなたはどこにいたのですか。
どうしてあなたは私を助け、
私の傷を癒してくれないのですか
という意味が書かれています。
左上には、
キリストがいて、
アントニウスの願いに応え、
悪霊と戦うために天使を遣わしています。
グリューネヴァルト鑑賞作品一覧